イギリスは、ロンドンより電車で1時間と車で20分程に位置するHertfordshire州北部の田園地帯Hitchinのラノック・マナー・ファームにて元々納屋として使われていた場所を借り受けてスタートしたBlendery(麦汁の製造は、別の醸造所の設備を借りて造り、その麦汁の発酵、熟成、ブレンドを行う)。
なだらかな耕作地と小さな牧草地に囲まれた、美しく静かな場所です。
2008年にベルギーのCantillonでGueuzeを飲んだGeorgeとCharlesの2人で10年後に創業したCrossover Blenderyは、英国ではかなり珍しく、100% Spontaneous(自然発酵)のビールのみを製造しています。
但し、ランビックは大好きで尊敬はしつつも、それをコピーしたい訳ではなく、全て英国産の原料を使用した地域性や英国らしい造りというものを意識した自分達なりの造りを自然発酵で行い、ワインやサイダー、ペリーの技術や手法、コンセプトの多くを取り入れ、ビールとの境界線を越える物をと言うコンセプトから、Crossover Blenderyと名付けられた。
実際にビールの製造をスタートしたのは2020年の1月に最初のビールを樽に入れた時からなのですが、それまでに元々の仕事を辞め、国内のボトルショップで働いたり、世界中色々なBarrel Ageビールをリリースしているブルワリー(De GardeやCantillon等)を巡って研究を深めていた彼ら。
その時に、Charlesが日本にも来ていて、マルホ酒店にたまたま訪れて以来の仲で、2019年当時、ちょうど仕込みをしたり引越準備中でバタバタしている最中に、私がイギリスに出張に行った時は、空いている部屋を使わせてくれたり、創業開始祝で日本から日本酒が好きな彼にお酒を送ったりして。
今回ようやく、商品のリリースが安定してきた事から日本への輸入となりました。
ケンブリッジシャー州ウィスベックのエルグッズ醸造所のクールシップで未発酵の麦汁を製造しており、ブルワリーの周りには、様々な花が植えられた庭がすぐ側にあり周辺に生息する野生酵母やバクテリアを取り込み、不要なバクテリアの繁殖を防ぐ為に、夜間10℃以下の冬季のみ醸造を行い、12~15時間かけて冷やして麦汁をつくります。
その後、自分たちのブレンダリーに持ち込み3年以上の熟成を経てもお酢のようにならずに、ビールとして穏やかな酸をキープさせる為に、通常より少し大きい400Lの樽に入れ、麦汁製造段階で取り込んだバクテリアと樽の中に住むバクテリアによる発酵・熟成を経つつ、時間経過と共に減った樽内のスペースの酸素を取り込みつつ、程よい酸化熟成を経て適度な酸を持った原酒に仕上げる。
一方で、例年より暑い時期は酸が緩い原酒になったりという季節変動の要素もやはりあったり、異常な温度の急変化には弱い為、自然発酵・熟成ならではのトラブルを一つ一つクリアしながら前に進んでいます。
冬季の醸造期間以外は、樽内ビールの熟成・フルーツの浸漬・ブレンディングや果物の収穫等を行い、野性味溢れるパワフルなランビックとはまた少し様相を呈して、穏やかな酸とどこかエレガントさもある味わいになっており、コンセプト通り英国らしい自然発酵のビールに仕上がっていると思います。