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À Tue-Tête ア チュエ テッテ (スイス)

 スイスを代表する湖、レマン湖東部からほど近くAigleに位置する「À Tue-Tête」 日本語読み「ア チュエ テッテ」。

 2017年Julien Bretheauが1人で創業のガレージワイナリーならぬ、ガレージブレンダリーです。

*ブレンダリー(Blendery)-ベルギーのLambic等で良く見られるが、他の醸造所から買い取った麦汁を自社で発酵・年単位で熟成・ブレンディングし製品化する所。
近代的American Craft的なビール造りとは全く異なる技術とアプローチが求められる。

主な、商品はWild Aleで、フラッグシップの「Surette」は、1年熟成・2年熟成の物をブレンドしたGolden Sour Aleで、フランス語のSourを意味します。

その他、フルーツや野菜等を使用するものは、基本的にはその副原料の名前をそのまま付ける事が多いそう。

ブレンダリー名の由来

 「À Tue-Tête」は、声高らかに叫ぶ事を意味しており、まるで子どもが遊んでいる時に、全力で大声を出して叫んだりするように、大胆で鮮やかな酸を持つ、自分の造ったビールを飲んでくれた人が、興奮して楽しんでくれたらという想いから名付けられました。

 ブレンダリーまではそれ程大変でもなく電車で行く事が出来ます。(最寄駅から徒歩だと少し遠いと思いますが…)
国連のあるジュネーブから電車に乗り、車中から見える美しいレマン湖。

そして、反対側の車窓から見える南向きの斜面には、小さなスペースが段々畑のようになっており、絶対手摘み以外の選択肢のなさそうな葡萄畑を横目に、電車で1時間半弱程揺られローザンヌも通り越してAigle駅へ。

Aigleの駅まで迎えに来てもらい、車で5分程。 小さな貸倉庫が連なる中の一角にBlenderyはあります。

 オーナーJulienは、20代の頃からビール好きで、2000年代初頭からベルギーのビアフェスに行く為に、車で旅行していたそう。

 その後カナダに移住して、野菜の缶詰を作る仕事に従事し、その時に北米のブルワリーが造る、ヨーロッパのビアスタイルを再解釈したようなビールと出会った事をキッカケにクラフトビールの世界に入り込みます。

 カナダからスイスへ戻ってからは、発酵「主に、 Sourdough Bread (サワードウブレッド)、sauerkraut(キャベツの漬物)、キムチなど」に興味を持ち始め、2012年にホームブルイングビールをスタート。

 以来、2017年に設立し、自身で麦汁から造っていた時期もあったものの、現在は近くのやや大きなブルワリー「Whitefrontier」にて、彼のレシピに基づいてベースとなる麦汁の製造を委託しています。

(最近は、同社のブルワリーとも品質基準の共通認識も持てているので、仕込みの度にブルワリーに行く事も少なくなってきたそう。)


ベースとなるビールは、都度見直しアップデートをかけられつつも、基本的に混合発酵のブロンド/アンバー/ダークの3種で大半がブロンドをベースに造られています。

〇Blenderyで商品が出来るまで

ブルワリーでの麦汁製造後、ブレンダリーへ持ち帰り、まずはセゾン酵母と共にFoederで発酵。

使用頻度の高いブロンドは4500LのFoederへ。

アンバー、ダークは、2500LのOval Foeder樽にて熟成。

こちらの各Forder樽は、ソレラシステム(Solera method)で運用されています。

*ソレラシステム…所謂、うなぎ屋さんのタレ的な感じで、継ぎ足し継ぎ足ししながら熟成させる仕組み。


フーダー樽で約1か月熟成後ビールを小さいオーク樽へ移し、自家培養酵母を追加。

それから更に、6ヶ月から2年(最低でもひと夏)の熟成期間を経て、ブレンディング。

そして、多くは更に1〜6ヶ月間フルーツによるマセラシオン(浸漬)を終えてようやく瓶詰・瓶内熟成。



、、、という、1つの商品が出来るまで気の遠くなる年月を要します。

 彼は、自身のビールを、ビールとワインの中間のような存在として捉えており、仮にビールとしてキャラクターが強く美味しいものでも、あまりに強すぎた場合は一旦改善対象として造るのを止めたりする等、料理とペアリング出来るバランスを強く意識したビール造りをしています。

 一緒にテイスティングしている時も、「このビールは知り合いのレストランで少しソースに混ぜて使われて出てきたよ」等、日常的にそういったやり取りが彼のビールをよりブラッシュアップさせているのだろうと思わせる。

(画像のビールとは異なり、その時はビーツのビールを飲んでました。)


一緒に出してくれたパンもベーコンもチーズも全て地元産で凄い美味しかった。

 造られたビールの3分の1は、フランスやベルギー等の欧州諸国へ輸出されており、ビールの店だけでなく、ワインショップやレストランでも彼のビールが楽しめる環境になってきている。

(事実イギリスのクラフトビールの有名店では、どこも彼のビールが数本置かれていて、その度写真を撮っては、凄いねと彼に送りつけていました。)

とは言え、ブレンダリーは貸倉庫2個分の極めて小さい規模で、1人で全てを行っているというのが少し衝撃的でした。

 使用するフルーツや野菜等は、どうしても使用したいが、地元にないような物を除いて、全て地元で採れた基本オーガニックのものを使用しています。

Blendery前から見える雄大な景色

 ワイナリーや農家の生産者とコミュニケーションを取りながら、丁寧に副原料の選定も含め、自身で行っています。 彼らと自身のコラボ作品のような心持ちで、地元生産者の情熱も常に共有しながらテロワール的目線での造りが行われています。

 ベースビールの味わいもさることながら、副原料の野菜やフルーツの特徴を上手く引き出す浸漬(マセラシオン)の技術も優れた彼。

 大学時代はフランス文学と社会科学を学ぶ傍ら、青果会社で働いており、その時に多くの地元の果物生産者と親しくなったそう。

 その後2008年より石畳や石垣を専門とする造園家の見習いとしての仕事も始め、現在もパートタイムで友人の仕事を手伝っている。

そんな今までのキャリアも奏功し、

1,副原料となる素材を見極める目

2,生産者へのリスペクトと関係性

3,素材の活かす知識

という彼ならではの強みを存分に感じさせてくれるビール達。

 実際、ビーツやハバネロを使用したビールが非常に印象的で、ブレンダリー訪問時にその話をすると、「前回は、ハバネロの出来に少し問題があったから次に期待している。」といった話や。

車で駅まで送ってくれる時も、

「川へ水浴びしに行った時に、美味しそうなフルーツ見つけたから今日この後もう一度見に行って来るんだ」みたいな話をしていました。

 彼自身の佇まいも、近代的クラフトビールの醸造家というより、農の道を歩む人のような空気感が非常に印象的で、生産量を拡大させたい等といった願いもそれ程なく、只々丁寧に目の届く範囲で自分の好きなビールを造って喜んで貰いたいというスイスの豊かな自然の中でゆっくりと熟成されるビールのように、穏やかでブレない芯のある人でした。

 最後に、オーナーのJulienからひと言メッセージ。

私は、自分が知っているテロワールを反映したビールを造るために、最高の果実を選び、ビールが出来上がるまでの時間をかけて、できる限りの努力をしています。

決められたスケジュール在りきで商品をリリースするような事もしません。

日本の飲み手の皆さんは、このゆっくりとしたプロセスを尊重し、理解してくれると思っているので、私のビールが日本にまで届くというのはとても特別な事です。
楽しんで下さい。

Julienより

Browar Stu Mosow-ストゥモストフ(ポーランド)

Donzoko brewing (UK)

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