ポーランド第4の都市で、国内で最も古い都市の1つヴロツワフ(Wrocław)に位置する(ストゥモストフ)Stu Mostówは、ポーランドにおいて最初に設立されたブルワリーの1つです。
元々、2020年にStu Mostówがリリースしたコラボビールセット6缶セットがあり、その中に弊社輸入のWHIPLASHコラボがあり、彼らのSNSから知る事になりました。
ちなみに、そのセットはCollab w/Other Half , 3Sons , WHIPLASH , Verdant , Bellwood , CRAKというギーク垂涎なコラボ集。
飲みたいと思ったら何故か常連さんが同じ経緯でセットの存在を知り、手元に持っていてシェア頂いた所から始まりました。
2014年9月に醸造所オープンしたブルワリーは、創業者のGrzegorzとArletta夫婦を含め 3人のみで創業したが現在は70人近いスタッフが働くまでの規模となり欧州を中心に20ヶ国以上へ輸出すると共に定期的に様々なブルワリーとのコラボも実施しています。
元々、創業者のGrzegorzは18歳頃に渡米し大学で金融を学んでいた当時、いつもアメリカのビールを飲むことはなく欧州のビールを探して飲んでいたそうですが、そんなある日友人に「アメリカに美味しいビールがあるのに何してんだ!?」と言われ住んでいたミネソタ州ミネアポリスにあるSurly Brewingに連れていかれます。
そこでは、ブルワリーオープン1時間前から並んで、開店の時間に最初の20人のみ限定のブルワリーツアーが行われ、ブルワリーの歴史やクラフトビールシーンの話を聞き、心機一転、どんどんクラフトビールの世界にのめり込んで行きます。
そして、2002年頃には地元のホームブルワー達とも親交を深めていきます。
とは言え、大学卒業後に金融業界で働く事になった彼は2010年にリーマンショックの影響で同僚の大半が失業したのを見て、その業界で働く意義を見失い新しい事をしようと考え始めました。
その後、欧州に戻りバルセロナの学校でMBAを取得する等自分の勉強期間も経て、アジアを旅したのちポーランドに戻ります。 ちょうどその頃2012年は、欧州のクラフトビール革命が大きく進んでいた頃ではあったもののポーランドは、欧州でも有数のビール消費国でもあるにも関わらず大手のラガービールしか見つけられないような状況でクラフトビールが恋しくなったものあり、妻Arlettaのアイディアもありブルワリー開業へ踏み切ります。
彼らの創業の地Wrocławという街は、8世紀にも渡りビール醸造の伝統がある街だったにも関わらず当時は、その全てが倒産したり大企業に買収されたりしており、クラフトビールを知る人はまだ数少なく、ネットで取り寄せる等しかないような状況だったそう。
そんな街の中で、彼らのブルワリーは街中でありながら、渋滞で立ち往生する車の喧騒から離れた場所、川沿いで古い家屋やと緑に囲まれた界隈の赤レンガの歴史的建造物の中にあります。
ブルワリーの上は、タップルームにもなっていて醸造タンクを眺めながら食事を取る事が出来るようになっています。
-名前の由来
「地元に密着した名前」「伝統的なもの」という事を念頭に、ブルワリーの名前を考えたそうで。
Stu Mostówは、ポーランド語で100の橋という意味を指します。
創業者の住むワルシャワ市も「百の橋の街」と呼ばれており、少し離れた場所ではあるもののブルワリーのあるWrocławという街は、オーデル川に囲まれている事に由来しており、川に囲まれている為街の至る所に橋があります。
何なら、まさしくブルワリーの横にも川が流れており橋がかかっています。
そういった地理的背景と、物事を繋ぐシンボルでもある”橋”という意味合いを掛け合わせた所から来ています。
– Stu Mostówのビールは大きく分けて4カテゴリ
創業当時、国内にはブルワリーは大手も合わせて50社程。
現在は、400以上にまで増えているそうですが創業したばかりの頃は、お客さんにビアスタイル含め、まずは色々知ってもらう事が重要であった為、ラベルを見ればある程度の情報を理解してもらえる分かりやすい形にしようという思いから、彼らの多くのビールは切り分けられています。
■WRCLW-伝統①
彼らの地域の伝統的なスタイルを含め、クラシックなビールを中心として構成し、街の持つ伝統とビール文化へのリスペクトを軸においたシリーズ。
ています。
Pilsner, Hefe Weizenや*Schöpsを作っています。
*Schöps-16世紀ごろから18〜19世紀まで彼らの地方で飲まれ始めたビアスタイルで、ドイツのラガーが普及し始めた当時に、人気を失いレシピが存在しなくなったスタイルで、彼らが様々な研究者や行政やブルワリーの協力の基、再現したビアスタイル。
木樽でビールが熟成されていた当時の背景を考慮し、少し酸味がありホッピーではなくスパイス感のある味わい。
■Salamander-革新②
ヴロツワフの今は無き数世紀前の伝統的な乾杯の方法が、サラマンダーと呼ばれています。
グループで長テーブルに座りビールを楽しみながら何か特別な事について乾杯をするというもので、誰かの誕生日だったり、子どもが産まれたりすると、グラスを持ちテーブルの上で大きな音を立てて乾杯。
そして、同時に全員が立ったままグラス1杯最後まで飲み干す。
そうした忘れられし伝統へのリスペクトをして命名されたシリーズです。
シリーズにおけるビールのコンセプトは、クラフトビールにより革新されたスタイルを提供する事を念頭に置いて作られています。
■Art③
世界中のブランドや人とのコラボレーションシリーズ。
メールでの単なるレシピ交換ではなく過去の経験をシェアし、アイディアを交換し、お互いから学び、楽しみながら特別なものを作ろうと努力しています。
例えば、イギリスのWylamとコラボした際は先にWylamのブルワリーでコラボを作りましたが、彼らに出したアイディアが非常に造るのが難しいビールで、結局好評だったそうですが,次にStu Mostówでコラボ醸造する際はWylamの方から逆に、醸造難易度の高いビールを提案されるなど、お互いに挑戦状の叩きつけ合いのような面白さも時にはあるそう。
■Wild④
樽熟成された実験的なWild Ale等を作るというコンセプトです。
ある種古典的なスタイルの要素もあるWild Aleを自分達なりの地域性も踏まえた解釈というのを軸にしており、地元で採れたものや地元のサプライヤーから仕入れ、収穫されたその日の内に手元に届くような新鮮なハーブやフルーツを使用しています。
こちらは、Wild Ale等専用に別で小さいブルワリーを構えており、そちらの設備で醸造しています。 また、2022年現在はバレルエイジプログラムの担当に元スペインはNapar bier(ナパルビア)でのブルワーが就任しています。
最後に、彼らのリリースにBaltic Porterが多い事に気づいた方向け。
元々、ポーターそのものが生まれたのはイギリスで
「古くなったペールエールとブラウンエールをブレンドして出したら味が評判で、じゃあその味のビールを最初から造ろうという流れで出来て、当時の荷物運搬の仕事をしている人に特に好まれたから、彼らの職業名でもあったポーターと名付けられた説。」
「商業規模でしっかりと仕込まれるようになった、このビールを待ってる人がビールを運んで来た運搬人(ポーター)を見て、ポーター来たぞ!と言った事から名付けられた説。」
など、色々あるのですが、その話は別の機会にさておき。
アーサーギネスがその評判を聞きつけアイルランドの当時の法律も加味して新たに造ったのがギネススタウトである事を知る人も多くおられると思います。
そんなポーターはエール酵母(上面発酵)で作られるのですが、このバルチックポーターはラガー酵母(下面発酵)。
元々、バルト海沿岸諸国発祥の伝統的スタイルです。
ポーランドも同様にその伝統性を持っていて、その伝統という部分も大事にしたいという想いから彼らはバルチックポーターを醸造しています。
彼らのビールを飲んでいる時にやたらと、バルチックポーターが出て来て、正直エールの方が熟成期間も短くて済むし、少しドライなバルチックポーターを造る意味みたいなものが中々腑に落ちなかったので、聞くとそんな答えでした。
そんな伝統への愛を持ちながら広げるポーランドの今や大きなクラフトブルワリーです。