スペインのマドリッドより北に位置する歴史ある地方都市Valladolidに位置するコントラクトブルワリーThe Flying Innは、幼稚園ぐらいの頃からの幼馴染同志のJuan ToledanoとCésar Martinezの2人で2016年に立ち上げられたコントラクトブルワリー又は、ジプシーブルワリーとも呼ばれるクラフトビールのブルワリーです。
Valladolidは、非常にワイン造りが盛んな土地で至る所でワイン適合品種のブドウの畑とワイナリーが立ち並びます。
また、ドン・キホーテの作者ミゲル・デ・セルバンテスが一時期住んでいた町でもある、古くはスペイン王国の宮廷が置かれた地でもあり非常に伝統的な街並みと車を少し走らせると広大な大地が広がります。
Cesarは、そんなValladolidで祖父の代からワイン造りに従事する家系で生まれ。彼の父も、ワインの醸造家として勤めた後友人と自身のワイナリーを立ち上げ、Cesarはワイナリーの現代表を務める彼の兄と共に経営のサポートをしています。
一方のJuanは、ヘッドブルワーとして醸造を担当し、自分の描いたレシピを委託するブルワリーに頻繁に出張を重ねながら新しいビールを醸造するだけではなく。
彼らの古代ギリシャ芸術を少し取り入れたアートワークも、ビールの名前も基本的に彼が全て考えてデザインしています。
そんな彼らが、ブルワリーを立ち上げるきっかけは、それぞれが別の場所で異なるキッカケでクラフトビールと出逢う所から始まります。
Cesarがカナダへ留学中にクラフトビールに出逢い・ハマり、彼はJuanに「クラフトビールってめっちゃ面白いよ」と伝えると奇しくも、Juanはベルギービールにハマっていた自分でホームブルーイングを始めていました。
(彼らのビールで、Saisonを使用したビールが少し割合が高かったりするのはそれが背景でもあります。)
そりゃ、昔からの幼馴染同志で仲良しなら同じものハマってもおかしくはないですが、以後一緒にスペインで趣味に近い形でホームブルーイングをするようになります。
そうした中で、自分たちの造ったビールを誰かに飲ませたりするのは当然の話で、とあるビアバーのオーナーが彼らのビールを気に入り、少量で納品するようになり、それが段々規模が増えていき、ホームブルーイングでは対応しきれない量になり。
もう少し醸造規模の大きな会社の設備を借りて、ビールを造るようになるというのは自然な流れでした。
そうして、趣味だったものから仕事としてコントラクト(ジプシー)ブルワリーとしてクラフトビールの醸造をスタートして1年後の2017年には、Untappdで「Best Spanish Brewery」にも選ばれ、現在はヨーロッパの数か国で委託醸造していたのをエストニアのTankerに極力集約し、4大陸へ輸出をスタートし、認められつつある気鋭のブルワリーです。
彼ら自体は、色々なビアスタイルを融合させたハイブリッドスタイルによる可能性を模索したビールを造る事が多く、これからもそのスタンスは変わりません。
それは、以下の定番ビールでも表されています。
定番IPA Nemesis
Westcoast IPA/NE IPA/Modern Europe IPAの3つの特徴を絶妙に融合させ、香りのエレガントさと控え目な苦味とジューシーなホップ感と程良いモルト感
彼からが初めて造ったビール、ベルジャントリぺルをベースにレシピ改編を重ね、DIPAにした。
ベルジャン感残るDIPA。
ただ、それとは別の意味合いでの可能性として。
前述した、Cesarの父が創業したワイナリーの存在です。
彼らは、ワイン品種のブドウやワイン樽を幅広く使用出来るだけでなく。
ワイン樽そのものが、元々どういう造り方をしたワインがどれだけの期間入っていて…等といった樽そのもののスペックまでコントロールする事が出来ます。
恐らく世界を見渡しても、そのカテゴリの中においてそれだけのアドバンテージを持つブルワリーは非常に限られた存在だと思います。
カベルネソーヴィニヨンを使用したサワーエール
これから、ワイン樽熟成のビールも造って行くとの事。
そして、特にここに載せる必要性はありませんが。個人的に好きな写真。
ワイナリーの前で、一緒にタイマーで写真撮ろうとして失敗した写真。
ブルワリーからのメッセージ
ビールを単なる飲み物として捉えていません。
僕らの目的は、ビールを開拓してきた人々を超える事です。
ビールの伝統が無い国に生まれた僕らは、ただただ最高のビールを造ろうとクラシックなものも新しいものも何でも採用してきました。
The Flying Innでは、感性に訴えかけるものを常に探求しています。
近年の醸造技術は、ビールの世界を変革してきました。それは、レシピの発展をさせる為だけでなくさらなる高みに向かう為に。
もはや、昔のように数ばかりでなく、質や美しさに向けた変革です。
ビールの可能性の幅を広げる事が僕らのミッション。
その為にも継続してより質の高い新しいレシピを造り、目標に向けての道筋を作っていきます。
とはいえ、新しいビールばかりという訳でなく、僕ら皆と同じようにビールに情熱を傾ける新しいビールファンを増やす事が出来るような定番ビールも造りたいと思っています。
クラフトビールは、ビジネスじゃなく新しいビールの世界に向けた聖戦だ! ようこそ